CASE STUDY
「AIを使えない企業に行ったら終わり」|金城大学 ゲスト講義レポート
金城大学
セミナー
2026年7月1日、金城大学のメディア論の講義に、株式会社AI-Brain 代表取締役社長の柏野真吾がゲストとして登壇しました。テーマは「AI時代のメディアリテラシーと批判的思考能力の育成」です。
講義後に提出された学生の感想文を読み返して、最も驚いたのは引用された言葉の傾向でした。プロンプトのコツでも、便利なツール名でもありません。最も多く書かれていたのは「AIを使えない、備わっていない企業に行ったら終わり」という一節でした。
これは学生の側の話であると同時に、採用する側である企業の話でもあります。
開催概要
・日時:2026年7月1日(水)
・会場:金城大学 ・講義テーマ:AI時代のメディアリテラシーと批判的思考能力の育成
・対象:大学2年生
・ゲスト講師:柏野 真吾(株式会社AI-Brain 代表取締役社長)
・構成:担当教員による講義、ゲストトーク、質疑応答
学生が最も反応したのは「企業選び」の話でした
講義の後半、柏野が紹介したのは、DeNA南場会長がインタビューで語った就職活動の基準です。AIを使えない、備わっていない企業に入ってしまうと厳しい、という趣旨の発言でした。
そのうえで、これからの人材に求められる力として三点が示されました。一つ目は、分業されていた仕事を一気通貫でやり切るマルチタスクの力です。二つ目は、ゼロから一を生み出そうとするチャレンジ精神です。三つ目は、顧客が何を喜ぶのかを想像するゴール設計の力になります。
この場面が、感想文で最も多く言及されました。学生にとってAIは「使ってもいい道具」から「使えることが前提の環境」に変わりつつあり、その環境があるかどうかで会社を見始めているということです。
採用に苦戦している中小企業ほど、この変化は他人事ではありません。給与や休日といった条件面で大企業と競うのは簡単ではありませんが、AIを使える環境があるかどうかは、規模ではなく方針で決まる要素だからです。
三年で価値が入れ替わった事実を、数字で示しました
なぜAI活用が企業選びの基準になるのか。講義では、その背景が数字で示されました。
世界の時価総額ランキングを見ると、1989年にはトップ10のうち7社が日本企業でした。それが2024年にはトップ10から日本企業が消え、トップ50に1社が残るのみとなっています。2026年時点の上位は、半導体やクラウド、AIインフラを握る企業が占めています。歴史的に見れば、巨大企業は「いまある産業」からではなく、次の生産性インフラを握った企業から生まれてきました。
生成AIの活用率も同様です。講義で示された調査データでは、2023年時点で大企業が20%程度、中小企業は10%以下でした。それが2026年には大企業で87%に達し、中小企業もおよそ40%まで伸びています。二、三年でほぼ全ての企業が「使わなければならない」と認識したツールは、インターネットを含めても例がないという指摘がありました。
学生からも、この点に触れた感想が複数ありました。企業の価値は時代とともに入れ替わるため、いま良く見える会社が十年後も同じとは限らない、という受け止め方です。
「ツールを使える人」から「ツールを活かして相手の役に立つ人」へ
講義でもう一つ強く印象を残したのが、価値の逆転についての話です。
情報処理や論理的思考といった、いわゆるIQ的なタスクは、AIによって誰でも一定水準に到達できるようになりました。だからこそ今後は、共感やディレクション、適応力、言語化といった、人にしか担えない領域の比重が上がっていきます。柏野は自社の会計事務所での経験を例に、そろばんから電卓、表計算ソフト、会計ソフト、そして生成AIへと道具が変わるたびに、専門性そのものの置き場所が移ってきたと説明しました。
「ツールを使えるだけの人」に希少性はなくなり、「ツールを活かして相手の役に立つ人」が求められていく。この一節を引用した学生も多く見られました。
質疑応答より(抜粋)
・レポートや自己PRでAIを使うとき、やってはいけないことは何か
内容を確認せずにそのまま提出することが最も危険だという回答でした。自分をよく見せる文章が出てきても、面接で対面すれば裏づけの有無はわかります。書かれた強みについて、実際の経験をエピソードとして語れるかどうかを自分で点検することが要点になります。
・自分でやることと、AIに任せることの線引きは
自分でチェックできる範囲かどうかが基準になります。まったく知見のない分野の出力は、誤りがあっても気づけません。専門外を扱う必要がある場合は、複数の生成AIに同じ指示を出して回答を突き合わせ、食い違う箇所だけ検索などで確かめる方法が紹介されました。
・地方で働くことに可能性はあるのか
情報量では都市部に及びませんが、その分だけ空白も大きいという回答でした。地方は取り組む人が少ないため、早く手をつければ第一人者として認識されやすく、近い距離の人と仕事を作れる面白さもあるという内容です。
学生の声
感想文から一部を紹介します(原文の表記を一部整えています)。
「AIは一時的な流行じゃなくて、今後は仕事や社会に欠かせない存在になっていくことを改めて実感した」
「IQの時代は終わり、EQのウェイトが最大化するという言葉が印象的だった。知識量ではなく、その知識をどう使える人間になるかが重要だと感じた」
「これからは自己紹介で、生成AIをどのように使ってきたかを問われるかなと思いました」
「AIの回答をそのまま信じるのではなく、自分で確認することが大切だと実感した」
全体を通して目立ったのは、AIの便利さよりも「確かめ方」に触れた記述の多さです。使うことへの抵抗はすでに小さく、関心は使い方の作法へ移っていました。

採用の現場で、AIは条件ではなく前提になりつつあります
二年後に社会へ出る学生が、企業のAI活用状況を見ています。そして彼らは、AIを使うこと自体ではなく、それをどう仕事に活かすかを判断基準に置き始めています。
裏を返せば、AI活用に取り組んでいる中小企業には、規模では届かなかった層に自社を選んでもらえる余地が生まれているということです。実際に、面接でAIの活用実績をPRする学生や中途採用の応募者は増えています。そのとき「うちはこう使っています」と具体的に語れるかどうかが、企業側にも問われます。
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