CASE STUDY

「禁止か放任か」で止まらないために|中央小学校 育友会 第一回クローバー学級 生成AI講演レポート

中央小学校

  • セミナー

2026年7月1日(水)、中央小学校 育友会の第一回クローバー学級にて、保護者の皆さまを対象とした生成AI講演を実施しました。テーマは「子どもとAI、どう見守る? 親のためのAI講座」です。

子どもに生成AIを使わせていいのか。禁止すれば安心なのか、任せておけばいいのか。講演では、その二択のあいだにある「適切な利活用」をどう設計するかをお伝えしました。


開催概要

・日時:2026年7月1日(水)10:05〜(約90分)

・主催:中央小学校 育友会(第一回クローバー学級)

・テーマ:子どもとAI、どう見守る? 親のためのAI講座

・講師:柏野 真吾(株式会社AI-Brain 代表取締役社長)/木元 拓(株式会社AI-Brain 公認パートナー)

・対象:中央小学校の保護者の皆さま

前半は柏野が生成AIの現在地と注意点を整理し、後半は木元が家庭での向き合い方とルール設計を扱いました。なお柏野は中央小学校の卒業生であり、今回は母校での講演となりました。


前半:便利さと落とし穴は隣り合わせ

柏野が生成AIを使い始めたのは2023年の夏でした。当時は周囲に話しても認知されていなかったツールが、二年あまりで保護者も子どもも触れるものへと広がっています。

柏野が示したのは、生成AIを「自分の苦手を引き受けてくれる優秀なアシスタント」として捉える見方です。当日の投影資料の表紙画像も生成AIで作成しました。

一方で、その便利さがそのままリスクにもなります。人気作品の画風を指定して自分の写真をアレンジした例では、出てきた画像に他者の著作権が含まれていました。生成物の基本的な権利は作った人に帰属しますが、既存の作品の権利はそれより強く働きます。SNSへの投稿や商用利用は、権利侵害として指摘を受ける可能性があります。子どもが保護者のアカウントで画像を投稿することは十分に起こり得るため、家庭でこそ注意が必要な論点です。


「正しそう」と「正しい」は違う

前半でもっとも反応が大きかったのは、柏野が自宅の庭木について相談した事例でした。大きくなりすぎた木の写真を撮り、「どのように剪定すればよいかビジュアルで教えて」と指示すると、写真の上に切る位置と残す枝を書き込んだ図解が返ってきました。以前は文章でしか返ってこなかった内容が、図として示されるようになっています。

ただし柏野は、この提案をまだ実行していないと話しました。理由は二つあります。一つ目は、その答えが本当に正しいかを自分では判断できないことです。もっともらしい図解が返ってきても、その通りに切って良い結果になるかは別の話です。二つ目は、AIの提案が人の気持ちに寄り添うとは限らないことです。剪定後の姿を画像で出させたところ、思い切って切り詰めた状態が示され、実行する気になれなかったと言います。

この二点は、そのまま子どもの使い方にも当てはまります。返ってきた答えを確認せずに受け取る癖がつけば、誤った情報をそのまま信じることになります。


子どもが使う際のリスクと、大人の役割

柏野は、子どもが使う際の注意点を四つに整理しました。

・誤情報:もっともらしい間違いが返ってくる

・個人情報:名前や写真、学校名を入力してしまう

・依存:考える前に聞く癖がつく

・丸投げ:作文や宿題を代筆させてしまう

また、ChatGPTやGeminiの利用規約では13歳未満の単独利用が認められていません。子どもが自分だけで操作するのはNGですが、保護者や先生が間に入って一緒に使うのであれば問題ないという整理です。会場でも、この制限を知らなかったという反応が多く見られました。

文部科学省も2024年12月26日に生成AIガイドラインVer.2.0を公表し、一律禁止でも放任でもなく適切な利活用を進める方向を示しています。使う場面と使わない場面を大人が設計するという考え方です。

なぜリスクがあるものをあえて使わせるのか。柏野が挙げたのは将来の社会とのギャップでした。2030年までに仕事で必要なスキルの約四割が変化すると言われるなか、いまの子どもたちが社会に出る頃には生成AIがあって当たり前の環境になっています。知識や計算はAIが補完してくれるからこそ、共感や対話、判断といった力を家庭と体験のなかで育てることが重要になります。


後半:AIは先生ではなく相棒

後半を担当した木元は、公認パートナーであると同時に小学6年生と2年生の子どもを持つ保護者でもあります。事前アンケートでは、考える力がなくならないか、依存しないか、個人情報を入力していいのか、といった不安が寄せられていました。

木元がまず示したのは、AIはすでに子どもの生活に入っているという前提です。保護者が知らないところで子どもが触れている以上、大切なのは知ることと見守ることになります。

そのうえで示したのが、AIは先生ではなく「一緒に考えてくれる相棒」という位置づけです。使い方次第で失われやすいのは、丸写しする癖、考える前に答えを見る癖、最後までやりきる力です。逆に上手に使えば、問いを立てる力、発想する力、情報を整理する力が伸びます。

木元が強調したのは、一番大事なのはAIそのものではなく「問い」だという点でした。「宿題やって」と頼めば答えは出てきますが、そこに学びは残りません。「ヒントだけ教えて」「一緒に考えて」と聞けば、考える過程は本人のものとして残ります。依存を防ぐ考え方としては、いつか外す前提で使う自転車の補助輪という比喩を用いました。


家庭で決めておきたい五つのルール

木元が提示した家庭でのルールは五つです。

・個人情報(名前・住所・学校名など)を書かない

・写真を送らない、個人が特定されないようにする

・宿題やレポートは丸写ししない

・困ったことや不安なことは必ず親に相談する

・使ったことを隠さず、正直に伝える

このうち四つ目について、木元は特に重要だと補足しました。ルールは子どもを縛るためではなく、子どもが安心して使うためにあります。困ったときに相談できる相手が身近にいる状態をつくることが、結果として最大の安全策になります。

勉強での使い方も、結論としては使っていいものの、「答えを出すため」ではなく「理解するため」に使うことが条件になります。実演では、自由研究をテーマ出しから段階的に相談していく方法、読書感想文を書かせるのではなく感じたことを整理する相手として使う方法を紹介しました。

最後に提示したのが家庭AIルールシートです。使う場所、使う時間、入れない情報、勉強での使い方、困ったときの約束という五項目を親子で埋めていくもので、まずは一つ決めることから始めてほしいと呼びかけました。


質疑応答とグループディスカッション

講演中は、挙手だけでなくQRコードから匿名で質問を投稿できるようにしました。

正しいかどうかの確認については、出てきたものをそのまま提出させない習慣づけが挙げられました。子どもには「AIを使ったのか」と問い詰めるのではなく、「自分で全部読み返してみた?」と聞くほうが伝わります。別の生成AIに同じ質問をして比べる、検索や書籍で裏を取る、親子で一緒に調べるといった手段の組み合わせも示されました。

写真や個人情報の扱いでは、まず設定の確認が必要だと伝えました。無料版では入力内容が学習に使われる設定が既定になっている場合があるため、学習させない設定への変更が前提になります。

講演後のグループディスカッションでは、指示の出し方を難しく考えすぎてしまうという声が多く挙がりました。これに対して柏野は、人に相談するように会話のまま話しかけて構わないと答えています。講師側からも、自分たちも常に「これでいいのか」と考えながら使っていると率直にお伝えしました。


参加者の声

・AIの使用ルールを子どもと一緒に決めたいと思った

・13歳未満は単独で使えないことを知らなかったので、子どもに伝えたい

・まずは写真を学習させない設定を、家中のパソコンとスマートフォンで行いたい

・これまでAIを避けていたが、正しい知識と使い方を知り、少しずつ使ってみようと思えた

・英会話や夏休みの自由研究のアイデア出しに使ってみたい

初めて生成AIに触れる方から日常的に使っている方まで、それぞれの段階で持ち帰るものがある内容になりました。


今回のまとめ

今回の講演で繰り返し伝えたのは、問いの立て方を変えるという一点でした。

AIを禁止するかどうかではありません。使わせるかどうかでもありません。どう使わせるかを大人が設計することが、子どもを社会に送り出すうえで必要になります。保護者がAIのすべてを知っている必要はなく、分からないことは子どもと一緒に調べればよく、その過程そのものが会話になります。

AI時代に育てたいのは、AIを使わない子ではなく、AIを使っても自分で考えられる子です。この考え方は、企業が社内で生成AIを導入する場面にもそのまま当てはまります。対象が変わっても、設計の考え方は共通しています。


AI活用のご相談を承っています

株式会社AI-Brainでは、企業・団体・地域コミュニティ向けの生成AI研修や講演を実施しています。保護者向けの講座から社内でのAI活用ルール設計、業務への導入支援まで、目的と対象に合わせて内容を組み立てています。

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