CASE STUDY
「丸投げ」をやめたらAIの答えが変わった|中部地質株式会社・全12回AI研修の第3回レポート
中部地質株式会社
セミナー
「AIに聞いても、当たり障りのない答えしか返ってこない」――そう感じて使うのをやめてしまう方は少なくありません。第1回でガイドラインの土台を固め、第2回で議事録の自動化まで構築した中部地質株式会社のAI研修は、第3回で「AIの答えを自分で引き上げる技術」へと進みました。
地質調査・地盤コンサルタントとして石川県で実績を持つ同社のメンバーが、ChatGPT・Gemini・Claudeを実際に使い比べ、旅行プラン作成を題材に「出力の確度」を劇的に変える流れを体験した第3回(2026年6月25日開催)の様子をレポートします。
開催概要
・日時:2026年6月25日(水)
・主催:中部地質株式会社
・講師:木元 拓・大鋸 佳輝(株式会社AI-Brain 公認パートナー)/柏野 真吾(同 代表取締役・サポート)
・テーマ:ChatGPT・Gemini・Claudeの使い分けと、AIを賢く使う方法
・参加者:中部地質株式会社 生成AI活用選抜メンバー
・回数:全12回プログラムの第3回
第3回のゴールは、AIを「なんとなく使う」段階から「意図通りに使いこなす」段階へ引き上げることに置かれました。返ってきた答えに一喜一憂するのではなく、AIの仕組みを理解して主体的に出力をコントロールするコツを、90分のワークショップを通じて体感する構成です。
同じツールに見えて、AIには「裏の性格」がある
第3回はまず、代表的な3つのAIツールの違いを整理することから始まりました。ChatGPT、Gemini、Claudeはどれも対話型AIですが、得意分野とチューニングの方向性が異なります。
研修で示された役割分担は、ひとつめがChatGPTで、企画出しや大枠の作成といった「ゼロからイチを作る」アイデアマンとしての強み。ふたつめがGeminiで、Google検索網を活かした高速なWeb検索と最新情報の裏付け。みっつめがClaudeで、大量の資料読み込みと、実用に耐える美しい文章表現です。
講師が強調したのは、違いが文章のトーンだけでなく「情報の深さや客観性」にも表れるという点でした。たとえばGeminiは検索から具体的な店名や住所を拾ってきますが、ハルシネーション(誤答)を含む可能性があります。一方Claudeは不確実な具体情報を避け、整合性の高い回答にまとめる傾向があります。この性格の差を知っておくことが、使い分けの第一歩になります。
迷ったときの判断基準もシンプルに共有されました。目的のコアが「アイデア」ならChatGPT、「裏付け(検索)」ならGemini、「文章品質」ならClaude。あらゆるタスクを1つのツールで処理しようとするのは非効率で、「何をさせたいか」でその場で切り替えることが、業務効率を大きく変えます。
「丸投げ」が失敗する理由
ワークショップの題材は、国内旅行プランの作成でした。一見すると業務とは関係なさそうですが、ここには「AIへの指示の出し方」というすべての業務に通じる原則が詰まっています。
最初に行ったのは、あえて曖昧な質問をそのまま投げてみることです。「金沢を2泊3日で旅行します。おすすめのプランを教えてください」と入力すると、兼六園やひがし茶屋街といった定番スポットを並べた、一般的で大まかなプランが返ってきました。間違ってはいませんが、誰に投げても同じ答えになる「普通の回答」です。
なぜ丸投げでは物足りないのか。講師は、AIが事実を検索しているのではなく「最ももっともらしい文章」を組み立てる仕組みだと説明しました。だからこそ、前提条件を渡さなければ平均的な答えしか出てきません。ここで参加者は「これで何が足りないか」を考え、次のステップへ進む準備をしました。
6つの条件で、答えの解像度は劇的に変わる
次のステップが、条件の追加です。研修では「同行者・期間・予算・体力・季節とテーマ・外せない希望」という6つの軸に沿って条件を言語化し、さらに「あなたは経験豊富な旅行プランナーです」という役割を与えて投げ直しました。
すると出力は一変します。ただの定番スポットの羅列から、移動距離が短くバリアフリーに配慮した観光ルートや、条件に合った宿の提案へと、具体的に考慮されたプランに変化しました。日付・時間帯・行動・場所・おおよその費用を表形式で指定すれば、一目で行動計画と予算の整合性がわかる形にもなります。
ポイントは、頭の中にある前提(誰と、予算は、体力は、目的は)をすべて言語化して渡すこと。そして「旅行プランナー」のような明確な役割を指定することです。この2つが、成果物の品質に劇的な差を生みます。
1回で終わらせず、対話で磨く
研修で繰り返し強調されたのが、1回きりの出力で終わらせないことです。対話型AIの最大の強みは「文脈の理解」にあります。最初に出たプランに対して、さらに要望を重ねることで、自分の理想に近づけていきます。
実演では、「3日目の午後の選択肢を、他のおすすめスポットであと2つ提案して」と代替案を求めたり、「全体の予算を1人あたり4万円に抑えた案を出して」と予算を再調整したりする深掘りが示されました。最初の不完全なプランに段階的に注文を重ねることが、実用に足るアウトプットを作るコツです。
そして最後に欠かせないのが、確度の確認です。出てきたプランの気になるスポットをGeminiに入力し、「この宿は本当にバリアフリー対応か」「夕食の店の定休日は合っているか」をWebデータから検証する。面倒な組み立てはAIに任せ、実在確認や定休日のチェックは自分で裏付ける――この役割分担こそが、AI活用の核心として共有されました。
AIを「自分専用」に育てるカスタム指示
ワークショップの後半では、ChatGPTのカスタム指示(Custom Instructions)が紹介されました。これは、自分の「仕事内容(背景)」と「理想的な答え方」を事前に登録しておく、自己紹介カードのような機能です。一度設定すれば、新しい会話を開くたびに自動で適用され、毎回同じ前置きを打ち込む手間がなくなります。
研修では、そのままコピーして使える設定例も共有されました。たとえば「結論を最初に書き、箇条書きを多用し、過度な挨拶は省く」といった簡潔さ重視の型や、「中小企業の経営者として、客観的なビジネス視点でリスクと具体策を答える」といったプロ視点の型です。
効果は実演で示されました。設定前は前置きの長い丁寧すぎる文章が返ってきたところが、設定後は結論からコピペ可能な形式で即座に出てくる。同じ質問でも、出てくる答えが別次元に変わる様子に、参加者の関心が集まりました。
安全に使い続けるための2つの原則
第3回でも、第1回から続くセキュリティの視点が改めて確認されました。
ひとつめは、社外秘・個人情報は入力しないという原則です。無料版や標準設定のまま入力したテキストは、開発元のAIモデル学習に再利用される可能性があります。顧客の名前・連絡先や、自社の未公開データはそのまま流し込まず、質問する際は「○○県在住の50代男性」のように匿名化することが推奨されました。チャット履歴と学習の設定をオフにすることで、学習リスクをおおよそ回避できる点も共有されています。
ふたつめは、AIの出力は必ず自分で確認するという原則です。AIは悪気なく、実在しないURLを作ったり古いデータを最新のように出力したりします。店名・商品名・法令や基準となる数値は、Google検索や公式サイトで裏付けをとる。AIを「有能だが、ときに嘘をつく新入社員」と捉える姿勢が、安全な活用の前提になります。
アンケート結果と次回への展望
研修後のアンケートでは、総合満足度で最高評価が多数を占めました。AI活用の障壁として最多だったのは「ハルシネーション(誤答)への対応・チェックの手間」で、次いで「情報漏洩やセキュリティへの懸念」が挙げられました。第1回から継続する課題意識がうかがえます。今回のワークショップで「確度の確認」と「安全利用の原則」に時間を割いたことが、参加者の関心と合致していたことが裏付けられた形です。

次回は、本日ChatGPTで学んだ条件設定やカスタム指示の考え方を土台に、文章の美しさで他を圧倒するClaudeの実践へと進む予定です。参加者にはまず、claude.aiへログインして使える状態にしておく「宿題」が共有されました。専門業種で組織的にAI活用を推進する事例はまだ多くありません。今取り組むことが、業務効率化だけでなく採用ブランディングや競争優位にもつながります。次回以降のレポートも順次お届けしていきます。
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